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デザイン思考
デザイン思考の語源
デザイン思考(Design Thinking)とは、デザインの手法やアプローチをビジネスや社会問題の解決に応用する考え方である。この手法は、イギリスのデザイナーであり教育者のピーター・ロウェンスバーグが提唱した。デザイン思考は、製品やサービスの開発において、ユーザーの視点やニーズを重視し、創造性や共感性を大切にするアプローチである。
デザイン思考の特徴
デザイン思考の特徴は主に4点挙げられる。
1つめは、「ユーザー中心のアプローチ」である。ユーザーの視点やニーズを理解し、そのニーズに合ったソリューションを見つけることを重視する。 2つめは、「共感と創造性」である。ユーザーとの共感やアイデアの創造性を重視し、従来の考え方にとらわれない発想を大切にする。 3つめは、「プロトタイピング」である。アイデアを素早く形にするために、試作(プロトタイプ)を行い、ユーザーのフィードバックを得ることを重視する。 4つめは、「継続的な改善」である。継続的なフィードバックを受けて、製品やサービスを改善し続けることを大切にする。
デザイン思考と似ている言葉
デザイン思考と似ている言葉としては、「アート思考」がある。この二つはいずれも、アイデアを創出するためのものという点では共通しているが、明確な違いがある。デザイン思考で基盤になるのは、「ユーザーのニーズ」であり、すでにある製品やサービスをさらに進化・発展させる場合に有効となる。
一方で、アート思考で起点となるのは、「自分が持つ自由な発想」である。ありえないことも含めて発想するので、誰もが思いもつかなかったアイデアを生み出す可能性もある。ここで肝要となるのが、「どちらが良い、悪い」ではなく、目的やシーンによって、思考を使い分ける必要があるということである。
デザイン思考の実例
デザイン思考の実例として、Apple社の「iPod」が挙げられる。まずは、競合製品を分析し、ユーザーが音楽をどのように聴いているのかなどを調査した。その結果から、ユーザーがCDからPC、PCからプレイヤーへと音楽データを移行しなければならないことに、非常に不便さを感じていることに気づくことができた。また、選んだ音楽を「いつどこに居ても聴きたい」というニーズがあることも見つけることができた。発見したニーズから、「すべての音楽をポケットに入れて持ち運ぶ」「音楽の聴き方にイノベーションをもたらす」といったコンセプトを策定した。コンセプトの具体化に向けて、円盤型のマウスによる画面操作、iPodやPCのデータとの自動同期など、これまでにない画期的なアイデアをもたらした。アイデアを盛り込んだプロトタイプが作成され、テストも繰り返し行った。その都度、当時のCEOであったスティーブ・ジョブズから、「ボタン操作は2回までに」「より軽量に」「大音量に」「画質をシャープに」などといった厳しい要求が寄せられた。デザイン思考を活かした開発によって、「iPod」は、世界的メガヒット商品となった。
デザイン思考のメリット・デメリット
デザイン思考のメリットは、主に3点挙げられる。
1つめは、「ユーザー満足度の向上」である。ユーザーのニーズに合った製品やサービスを提供することができるため、ユーザー満足度が向上する。
2つめは、「革新性の促進」である。従来の枠組みにとらわれない発想が生まれやすく、革新的な製品やサービスを生み出すことが可能である。
3つめは、「問題解決の効率化」である。ユーザーの視点を理解し、早期に試作を行うことで、問題解決の効率化を図ることが可能である。
一方、デザイン思考のデメリットとしては、主に2点挙げられる。
1つめは、「時間とコストの増加」である。徹底したユーザー調査や試作を行うため、開発にかかる時間やコストが増加する可能性がある。
2つめは、「組織内の変革の難しさ」である。デザイン思考は、試行錯誤を重視し、失敗や誤りを許容する文化が求められる。また、柔軟性や共創性も求められる。 失敗を恐れる保守的なチームや組織、組織の伝統や文化を重んじるチームや組織においては、従来の組織文化との整合性が取りづらい場合があり、適応が難しい場合がある。
デザイン思考がトレンドになっている理由
デザイン思考が注目されている背景としては、市場構造の変化がある。
これまで、製品やサービスなどを開発する現場では、マーケットやユーザーニーズを調査し、仮説を設定・検証して製品を開発するという、「仮説検証型」のアプローチが主流であった。ただ、変化が激しく予測困難なVUCAの時代では、このスタイルがもはや通用しなくなってしまう。リサーチを行っても、課題の本質を迅速に捉えることが難しい案件が急増している。また、急速な技術革新により、社会構造が大きく変化していることも見逃せない事実である。その結果、イノベーションを導きやすい「デザイン思考」がクローズアップされているという背景がある。
デザイン思考のプロセス
タンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所では、デザイン思考を実践する際には、以下5つのプロセスを踏んでいく必要があると提唱している。
1.共感(Empathize)
「デザイン思考」は、まずユーザーの共感を得ることから始まる。 具体的には、インタビューやアンケートを行ったり、観察したりすることにより、ユーザーが何に共感しているのか、本当に求めているものは何かを見つけ出していく。ここで、注意しなければいけないのは、聞き取ったユーザーの意見を鵜呑みにしないことである。ユーザーがどういう想いでそう回答したのかという、本音をしっかりと探り出す必要がある。
2.定義(Define)
ユーザーの「共感」をヒントに、ユーザーのニーズを定義する。 本当は何を実現したいのか、潜在的な課題は何なのかを深掘り、抽出していく。なかには、ユーザー自身でもまだ気付いていないニーズも出てくることも想定される。言語化されている背景にあるユーザーの想いも分析していくことで、目指すべき方向性やコンセプトはかなり策定しやすくなると言える。
3.概念化(Ideate)
ユーザーが実現したいこと、ユーザーのニーズを定義できたところで、ブレーンストーミングなどの手法を用いて、それを解決するアイデアやアプローチ手法を話し合っていく。ここで大切なのは、質ではなく量を意識すること。制限を設けずとにかくアウトプットしていくことである。
4.試作(Prototype)
アイデアが固まったところで、次はチームの支持を得たものを試作品として作っていく。時間やコストをできるだけ掛けずに、取りあえず一度形にしてみることが肝要となる。そうすることで、新たな視点や問題点に気づくことが可能になる。
5.テスト(Test)
試作品に対するユーザーテストを繰り返し、フィードバックされた意見を参考にブラッシュアップを図っていく。定義したユーザーのニーズや概念化、試作などが正しかったのかを確認し、より精度の高い製品やサービスを創り上げていく。
これら5つのプロセスは必ずしも、順番通りという訳ではない。同時並行で進めても、行ったり来たりでも問題はない。包括的にユーザーに関する「情報」を捉えることが何よりも肝要と言える。
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