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リスキリング
リスキリング(Re-Skilling)とは、アメリカ発祥の概念であり、新しい仕事や職業に求められているスキルを獲得することを意味する。日本では、「学び直し」と訳されることもあるが、生涯教育やリカレント教育との違いが分かりにくくなっている。生涯教育やリカレント教育は、働く個人が任意のタイミングで能動的に学習をし、知識やスキルの獲得に努める。時には、仕事を辞めることも想定される。一方、リスキリングでは、学びを主導するのは個人ではなく企業である。
リスキリングが取り上げられるようになった背景には、テクノロジーの進化、地球温暖化、人口減少に伴う労働人口の減少等様々な環境の変化が予想を上回るスピードで進み、企業経営における不確実性が増していることが挙げられる。企業経営の不確実性が増すことで発生するのは、「変化への対応」である。リスキリングも変化に柔軟に対応する施策の1つとして取り上げられるようになった。しかし、日本において入社後に学び直す文化は根付いておらず、リスキリングの推進に苦心している企業も見受けられる。その要因として、日本企業が人材育成に投資してこなかったこと、終身雇用という社員の雇用を保障する雇用形態に伴い、リスキリングを行うメリットが社員に浸透できていなかったことが挙げられる。
リスキリングの手法として活用することが多いのが、e-ラーニングの活用である。しかし動画を単に視聴するだけでは、学んだ内容を実践に移せず、学習の費用は無駄になるケースが多い。2022年10月、岸田総理は国会での演説にて、今後5年間で合計1兆円を個人のリスキリング支援に投資することを発表した。この背景には、岸田政権が掲げる経済政策の三大柱の1つ、「構造的な賃上げ」を実現することが挙げられる。具体的には、日本の場合、IT分野等高度なスキルを必要とする職業の人材不足が指摘されている。そのためリスキリングを通じて労働者が実務的なスキルを獲得し、生産性の向上つまり、個人の付加価値を上げていくことが求められている。労働生産性が高まることで実質賃金の上昇が見込まれ、構造的な賃上げを起こすことが狙いである。しかし、リスキリングは前述した通り、企業が主導する学びである。つまり、企業が社員にどのようなスキルをリスキルしてほしいのか、リスキリングした上でどのようなキャリアや職務を担ってほしいのか明確になっていないと、育成への投資は無駄になってしまう可能性がある。
リスキリングを適切に行う3つのポイントがある。
1つ目はスキルを可視化することである。前提として、その企業における今後の事業戦略、ビジネスの革新に当たって新しく必要なスキルは何か明確にする必要がある。そして、現在の社員が保持しているスキルと求められるスキルとの間のギャップを把握し、そのギャップを埋めるための金銭的・時間的コストを算定することが重要である。
2つ目は学習を進めるサポートを整えることである。日々、業務を行う中で新しい知識を学ぶことはかなり労力がかかることである。継続的な学びを支援できるように学習管理システム等のツールとの連携のもと、進捗や費やされている時間、理解度や習熟度を観測し、誰一人離脱することがないサポートを提供することが必要である。
3つ目は実際に学んだ知識を実践できる機会を与えることである。リスキリングが求めるのは、新しい知識を獲得することで終わるのではなく、獲得した知識を使って新たな価値創出をしてもらうことである。そのため、異動やあるプロジェクトへの参加等、社内でのスキル発揮の機会を創出する仕組みを整え運用することも必要だと言える。
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