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偽装請負
契約上は注文主と労働者との間に指揮命令関係を生じない「業務請負」の形式をとっているにも関わらず、実際には注文主の指揮命令下で労働者に業務を行わせること。
「業務請負」では労働安全衛生法に基づく事業者責任は請負業者が負い、注文主には業務上一切責任がない。「労働者派遣」や、実態が労働者派遣となる「偽装請負」の場合は、当該事業者責任は派遣先(注文主)が負うことになるため、注文主が事業者責任を負わない「業務請負」が広まった。
「労働者派遣」か「業務請負」かは、契約形式ではなく実態に即して判断され、労働者と注文主との間に指揮命令関係があれば、労働者派遣と見なされるため、『偽装請負』は「職業安定法第44条」及び「労働基準法第6条(中間搾取の排除)」に抵触する。
製造業では、2004年2月までは労働者派遣が禁止されていたために、それまではコスト抑制対策の為に「業務請負」の形式をとっている業者は多かった。
2004年3月の製造業への労働者派遣解禁後も、製造業への労働者派遣は派遣期間が1年と限定されており、派遣期限後は労働者へ直接雇用を申し込む義務があったため、「偽装請負」の実態が減ることはあまりなかった。
製造業に限らず、IT業界でも個人事業主や請負業者が業務を請け負っているにも関わらず、現場の指揮管理責任者がおらず、注文主から直接の指揮命令により業務を行っていることも多い。
最近の事例として、偽装請負と黙示の雇用契約の成立した事件(東京高裁 平27.11.11判決)がある。
注文者の工場における業務の一部が元請業者から下請業者へと再委託されていたところ、①注文者の工場内で労務を提供していた下請業者の労働者について、注文者が直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には当たらないため、偽装請負には該当せず、 ②注文者と下請業者の労働者との間に黙示の雇用契約が成立していたものと評価することはできないと判断した。
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